みその基本
みそは「発酵食品」
味噌は、大豆と麹と食塩を混ぜ合わせ、発酵熟成させたもの。発酵熟成中に働く微生物によって、できあがりに影響が出ます。微生物の働き方は気候風土やそれぞれの蔵によって微妙に変わるため、原料が同じでもできあがりが違ってきます。
さらに原料や環境、水質などの条件も加わり、それらが複雑にかかわり合うことによって、地方によって違う千差万別の味噌が生まれました。
現在のように技術が向上し、流通が発達しても、全国的に均一の味噌を作ることは不可能なのです。
みその分類
原料で分類すると、米味噌、麦味噌、豆味噌の3種類と、これらを混合した調合味噌に分けられます。米味噌は大豆に米麹を加えたもの、麦味噌は大豆に麦麹を加えたものです。豆味噌は大豆のみを主原料としています。
甘口、辛口というように、味噌は味によっても分けられます。辛さ加減は食塩の量によりますが、もう一つの決め手は麹歩合です。これは原料の大豆に対する米麹や麦麹の比率のこと。塩分が同じなら、麹歩合が高い方が甘口になります。
味噌は、できあがりの色によって、赤味噌、淡色味噌、白味噌に分けられます。色は、大豆等原料の種類やその加工の仕方(煮る、蒸す)、麹の量(麹歩合)、醸造方法等の様々な条件によって違ってきます。
全国各地お国自慢みそ
南北に長いその地形や、気候によって日本全国各地で味噌の種類も様々です。北海道では赤い色の中辛口味噌が主流で、仙台では仙台味噌と呼ばれる伊達政宗時代より引き継がれている赤色辛口味噌が有名です。味噌の原料となる穀物も全国的に「米」が使われることが多いものの、中部地方では「豆」、九州や四国の一部の地域では「麦」が使われています。
原料による分類 | 味による分類 | 色による分類 | 代表的なみそ |
米味噌 | 甘味噌 | 白 | 関西白味噌、讃岐白味噌、府中白味噌 |
赤 | 江戸甘味噌 | ||
甘口味噌 | 淡色 | 越中味噌 | |
赤 | 御膳味噌 | ||
辛口味噌 | 淡色 | 信州味噌 | |
赤 | 北海道味噌、津軽味噌、秋田味噌、仙台味噌、会津味噌、佐渡味噌、越後味噌、加賀味噌 | ||
麦味噌 | 甘口味噌 | ー | 瀬戸内麦味噌、九州麦味噌 |
辛口味噌 | ー | ||
豆味噌 | ー | 東海豆味噌 |
みその歴史
みその伝来
味噌の起源は古代中国の「醤」だといわれています。醤は、獣や魚の肉をつぶし、塩と酒を混ぜてつぼに漬け込み、100日以上熟成させたものです。
今のソースや醤油と同じように使われていたようです。紀元前700年ごろの周王朝には醤を専門につくる役職があり、王家の正式な料理「八珍の美」(8種類の基本料理)には120かめもの醤が使われたと記録に残っているほどです。醤は大変格式の高い調味料だったのです。紀元前1世紀ごろになると、大豆や雑穀を発酵させた「鼓」が作られるようになります。
醤や鼓がいつごろ、どのように日本に伝来したのかは、よくわかっていません。醤や鼓の文字が、初めて登場する「大宝令」(701年)には、中国にはない「未醤」という言葉も見られます。これは、醤に日本人が工夫を加えた新しい調味料で、味噌の前身ではないかと考えられています。
みその日本史
平安時代
この時代の味噌は、当時の高級官僚に月給として支給されるほどで、庶民の口にはなかなか入らないぜいたく品でした。味噌の専門店が史料に登場するのは京都東区の醤店と西市の未醤店が最初です。
鎌倉時代
この時代には「すり味噌」が作られるようになり、水に溶けやすいため味噌汁として利用されるようになりました。さらに「一汁一菜」という鎌倉武士の食事の基本が確立します。 主食や“一菜”の中身はいろいろ変化したが、“一汁”は常に味噌汁でした。
室町時代
味噌汁が庶民の間に浸透しただけではなく、今に伝わる味噌料理のほとんどがこの時代に作られ始めています。室町から戦国時代にかけては、ご飯に味噌汁をかけて食べるのが普通でした。また、室町時代末期には、醤油が発明されたといわれています。
戦国時代
戦国武将たちはみな、戦闘能力を左右する兵糧(戦陣食)には重大な関心を払っていました。特に米と味噌、この2つは絶対必要な兵糧でした。例えば武田信玄は味噌作りを奨励し、伊達政宗は城下に「御塩噌蔵(おえいぞくら)」と呼ばれる味噌工場を建てました。これが日本で最初の味噌工場です。
味噌を携帯する方法としては、干すか焼くかして味噌玉にしたものを、他の食料と一緒に竹の皮や手ぬぐいで包み、腰に下げるのが一般的でした。また、干菜や干大根などを味噌で塩辛く煮詰め、それを干し固めて携帯し、陣中ではそれを水に入れて煮ればそのまま味噌汁になる、即席味噌汁のようなものも考え出されました。
江戸時代
この時代になると、味噌は現在とあまり変わらないぐらい、人々の生活になくてはならない食品になっています。
江戸中の生産だけでは味噌の需要をまかないきれず、三河の三州味噌や仙台味噌が江戸に運ばれ、味噌屋は大繁盛します。ただし、武士、農民、大商人は自家醸造がほとんどで、味噌の販売は庶民を対象としていました。
しかし一方では、高級料亭の開業も相次ぎ、優れた料理書も多く出回って味噌料理はますます洗練されていきます。
現代
時代にともない、味噌の容器は樽から冷蔵庫へ収納しやすいカップへ変化してゆきました。また、昭和にはだしを取る手間を省いてもおいしいみそ汁を作ることができるだし入り味噌が登場し、社会進出する女性たちを後押ししました。
みそQ&A
こちらでは、味噌に関するよくあるご質問と、その回答を掲載しております。掲載内容以外にご不明な点がございましたら、お気軽にお問い合わせください。
味噌を上手に保存するには?
開封した味噌は容器の口をしっかりと閉めて空気が入らないようにし、必ず冷蔵庫に保存します。容器入り味噌も表面にラップを密着させてフタをすると、製造時の品質を保つことができます。
良い味噌の見分け方は?
•光沢のある冴えた色のもの
•味噌らしい香りの高いもの(大豆臭、酸臭、不潔臭、薬品臭のしないもの)
•塩味が慣れている物
•粘らずに溶けが良い物
•滑らかでざらつきのないもの
合わせ味噌が美味しいのはなぜ?
原料や製法に差がある産地の遠く離れた2種類以上の味噌を合わせることで、それぞれの風味の極端な特徴が打ち消され、また逆に不足する風味を補い合うことで、より一層コクのある味噌汁になります。甘口と辛口、赤色系と白色系(または淡色系)等、お好みに合わせてお楽しみください。
取り扱い上の注意点は?
•日の当たる所、温度や湿度の高い所には置かない
•開封後は、空気に触れないように密閉し、冷蔵庫に保管する
•味噌を取り出すときは、乾いたスプーンやヘラを使う
•味噌を使って家庭で調理加工したものは、作り置きしないようにする
味噌に賞味期限はあるの?
味噌は種類が多く、賞味期限も様々です。一般的には、麹歩合の高いものや塩分量が少ない甘口味噌ほど短命で、辛口味噌ほど長命です。しかし、もともと保存食品なので、密閉包装してあれば腐ったりすることはありません。表示された賞味期限を一つの目安にしてください。
変色してきたけれど大丈夫?
味噌は長期間保存すると、淡色味噌は赤色に、赤色味噌はいっそう色濃くなります。これは、アミノ酸が糖分と反応して褐色に変化する現象で、温度が高いほど強くなります。密閉包装してあれば変色しても栄養成分は変化しませんが、風味が多少損なわれることがあります。
変白いカビのようなものが付いてしまいましたが大丈夫でしょうか?
味噌の表面にできる白カビのようなものは酵母の一種で産膜酵母(さんまくこうぼ)といいます。無害ですが、香味を損なうためその部分を取り除き、味噌の表面にラップをして空気にふれないようにして冷蔵庫で保存してください。また、これとは別に味噌の表面や内部にできる白い結晶はアミノ酸です。
袋が膨れていますが?
味噌の袋が膨れるのは、味噌の中の生きている酵母が活動して炭酸ガスが発生するからです。品質には問題ありませんが、穴を開けてガスを逃がしてください。
味噌汁は塩分が多いとよく聞きますが?
味噌は、一度に大量に食べることはありませんので、料理に使ったときの塩分の量は多くはありません。そのため、味噌汁の塩分は決して多くはないのです。